“どうか、覚えていて。
 貴方を愛していた事を”






この世界―――君たちが呼んでいる名で
語るならば“メイプルワールド”と言う名の
世界は―――『私』が想像した世界だ。
『私』が誰なのか、それはハッキリ言って
『私』自身にもよく解らない、いつの間にか
産まれていて、ここに存在しているからだ。
まぁ『私』の話はいいだろう、突き詰めても
答えの出ない問答になるだけだ。ともかく
『私』の話を聞いて欲しい、『私』が想像した
この世界は、今でこそ君たちのような
冒険者たちが息づいてくれているが、少し
前までは閑散としていた。まぁどんな世界でも
はじまりというのはそんなものなのだろうが・・・。

『私』がこの世界を創造した理由は、ほんの
些細な孤独感からだった。だってそうだろう?
誰も居ない暗闇に、一人で漂っていたんだから。
それで『私』はこの世界を創造する事にした。
最初に作ったのは小さな島・・・君たち冒険者が
一番初めに辿り着く、あの“メイプルアイランド”と
呼ばれている島だ。次に作ったのが最初の島から
行ける“ヴィクトリアアイランド”だ、それでも満足
出来なかった私は、次にオルビスとエルナスと
いう大きな都市を持つ島を作った。そこで『私』は
ふと思い立った、この世界に生き物を住まわせて
みてはどうだろうか、と。『私』はどんな生き物を
作るか、悩みに悩んだ・・・そして『私』は一体の
生き物を作る事に決めた。溶岩に命を吹き込み
そいつに、君たち冒険者が“火の目”と呼んでいる
エネルギーの塊を与えると、そいつは産まれた。
そう、君たち冒険者がジャクムと呼んでいる
生き物だ。『私』はジャクムをエルナスの奥地に
住まわせる事にした。しかしジャクムが一人ぼっちだと
かわいそうなのでジャクムの友達を作る事にした。

その前に、『私』は更に都市を増やした。オモチャ箱を
ひっくり返したようなルディブリアム、戦隊ヒーローものに
出てきそうな地球防衛本部、昔情緒の残る下町から
なる“ルダストレーク”。オルビスと下町の間には海底
都市のアクアリウムを作り、オルビスから鶴に乗って
いける武陵と白草村からなる“武陵桃源”を作り。
熱砂の砂漠にあるアリアントと錬金術の町マガティアから
なる“ニハル砂漠”を作り、リプレと生命の洞窟からなる
“ミナル森”を作った。そして“ルダストレーク”とアクア
リウムを除いて、全ての都市を一つの大陸とした。
これが“オシリア大陸”だ。『私』はこの大陸を作った
所で、大陸作りを中断する事にした。そしてジャクムの
友達を作る事に専念する事にした。ジャクムの次に
生み出す生き物は、必然的にジャクムの最初の
友達となる。『私』はまた悩みに悩んだ、悩んだあげく
『私』は生命の洞窟の奥地に、一体の生き物を
作り出した。骨となっても、魂だけになっても君たち
冒険者を襲う恐ろしい生き物・・・そう、ホーンテイルを。

しかし、何をどう間違ったのか・・・『私』は重大な
ミスを犯してしまった。ホーンテイルを雌として
産み出してしまったのだ、これではジャクムと
友達にはなれない。『私』はそう思った・・・
が、そうはならなかった。しかし、『私』が望んだ
ような結果になったわけでもなかったんだが・・・。
ここから先、『私』は語るのをやめよう。これを
読んでいる読者諸君には、とある語り部の手に
よって、ジャクムとホーンテイルの悲しい物語を
知ってもらう事になると思う。どうかこの物語を
読み、知ってほしいのだ。君たち冒険者が
どうしてこの世界に招かれたのかを、そして
後の世まで語り継いで言って欲しい・・・
それが『私』の願いだ。


どうか、最後まで目を逸らす事の無きように。







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