“いつからだろう、アイツの事を
 友達として見れなくなったのは”




時計塔は静かだ、奥に行くに連れてどんどん
静かになっていくような気がする。カクレンボを
する時は、だいたいここでやる事にしている。
俺は時計塔の奥地で隠れている、今回こそ
見つからないようにしなければ・・・俺はまだ
一回もホーンテイルに勝ったことがない。
アイツは翼があるから絶対に有利だ、でも
俺は負けたくない。だから今回こそは・・・。
しばらく時間がたったけど、ホーンテイルは
現れない。今回こそは勝ったか?いや・・・
油断は禁物だ、移動したほうがいいか・・・?
俺は意を決して移動する、どんどんと移動して
行くうちに、見知らぬ場所へ出た。時計塔に
こんな場所が有ったなんて、知らなかった。
中央にある階段の上に、なんだか奇妙な
造形物があった。俺はそれに触れてみる。
すると、造形物がカッと眩しく光を放った。
目が眩みそうな光に包まれ、一瞬何が
起こったのか解らなくなった・・・そして次に
目を開けた瞬間、俺はまた見知らぬ場所へ
移動していた。変な機械装置が置いてある。
部屋の中央には時計を模した装飾がった。

「なんなんだ・・・ここ・・・」
俺は周囲を見回す、そして、気がついた。
声が聞こえる、苦しそうな声が、聞こえる。
俺は慌てて声のほうを探してみる、すると
そこには光の球が浮かんでいたどうやら
この光の球の中から声が聞こえてるらしい。
俺は恐る恐る光の球に触れてみた、光の球は
パチンとはじけて、そこから水色で頭に葉っぱが
生えた生き物が現れた。随分と弱りきっている。
俺は水色の生き物を抱きかかえる、どうやって
ここから出ればいいのだろう。早くしないとコイツは
死んでしまうかもしれない・・・俺は部屋に置かれて
いた機械装置にそっと触れてみる、しかし何も
起こらない。どうすればいい、どうすればコイツを
助けてやれる?俺には何も出来ないのか・・・?

「誰か!!ここから出してくれ!!」

俺は叫んだ、その叫びを聞き取ったのか、それとも
ただ動くのが遅かっただけなのか。機械装置が
低い唸りを上げて動き出した、そしてまたも眩しい
光に包みこまれた。俺と水色の生き物はその光に
包まれて、あっと言う間に長い梯子がかかるあの
場所まで連れ戻されてしまった。そしてそこには
何故かホーンテイルも居た、俺は目を丸くする。
「お前・・・なんでここに居るんだよ!!」
ホーンテイルはムッとした顔つきになる
「アンタが見つからないから、諦めてここに
 戻って来たのよ!何か文句ある訳っ!!
 それより・・・その水色の・・・なんなの?」
ホーンテイルはまじまじと俺の腕の中を見つめる。
「コイツ・・・時計塔の奥で見つけたんだ!
 凄く弱ってる・・・どうればいい?コイツ
 死んじゃうかもしれない・・・!俺・・・
 コイツを死なせたくない!せっかく俺と
 お前以外の奴を見つけたってのにっ!!!」
俺の慌てる姿を見て、ホーテンテイルは急に
俺の手を強く握ったかと思うと。勢い良く背中の
翼を広げて上昇した。時計塔を急スピードで
飛び出す、そのまま空高くへと飛び上がった。

「ナインスピリット!!あそこに
 行けば助かるかもしれない!!
 あそこには不思議な力があるの!」

ホーンテイルはそのままの勢いで翔ける。
俺は一縷の望みに全てを託し、腕の中の
水色の生き物を強く、強く抱きしめた。
助かるかどうか解らない、しかし今はこの
可能性に賭けるしかない・・・俺に出来る
ことはこの生き物を手放さないことだけだ。




ホーンテイルは更にスピードを上げた。









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