“決して、忘れはしない。
 君と過ごしたあの日々を”




ビシャスプラントの言っていた通り、時計塔の
奥地には新しい住人が増えていたようだ。
大きな一つ目、恐ろしげな風貌、喋り口調は
悪い・・・これがタナトス。もう一方は図体が
ごつくて大きな斧を持っている、あと無口。
これがゲートキーパー・・・なんでも二人は
ビシャスプラントが時計塔の守護者である事が
気に食わないらしい、こんな小さい奴には
守護者なんて任せられない。とタナトスが
言っていた、だがホーンテイルが氷の吐息で
威嚇すると急にしおらしくなって言うことを
聞くと言い出した。単純な奴らだ、まぁコレで
俺とホーンテイルとビシャスプラントとこの
タナトスとゲートキーパーとで世界に居る住人は
5人になった。ひょっとしたらもっとたくさんの
住人が住んでいるのかもしれない、これからも
まだ出会ったことの無い奴らに出会えるといいけど。

その日俺とホーンテイルはビシャスプラントに
世界の様々な場所を教えてやった。まだ
時計塔から出たことが無かったビシャスは
もの凄く目を輝かせて世界を見つめていた。
しばらく時間がたって俺たちはそれぞれの
住処へと戻って行った、明日も遊ぼうと約束して。





















「起きろ、ジャクム。」
赤い毛並みの犬が、ジャクムの目の前に
迫って来ていた。ジャクムはぼーっとした
顔つきで目をこする、大きく欠伸をした。
「・・・もう朝か、ファイアブル。」
首にトゲトゲ付きの首輪をした大きな犬は
のっしのっしとジャクムを連れて歩き出す。
「もうじゃない、だいぶ前から朝だ。」
少々イラついた感じでそう告げる。
ジャクムは朝に弱い、それはずっと昔から
そうだった。少し大きくなった今も変わらない。

ジャクムとホーンテイルがビシャスプラントを
助け出してから、数百という時間が流れていた。
アレから長い時間がたって、ジャクムの周りには
彼を守護者と慕う生物たちが集まっていた。
このファイアブルもそのウチの一匹である。
ドロドロとした溶岩地帯を抜けると、その先には
蝙蝠の飛ぶ長い縦穴がある。ジャクムはそこで
ファイアブルと別れる、その先にある炭鉱へと
進み出ると、そこにはマイナーゾンビとクーリ
ゾンビが仲良く働いていた。ジャクムはじっとその
様子を見つめた後、更に奥へと歩を進めてゆく。
死んだ木の森を抜け、更に先へ、先へ、先へ・・・。
しばらくして、エルナスという極寒の地に拓けた
大きな町へと辿り着いた。ジャクムは十本の腕を
器用に使って、英雄の官邸の内部へと入った。

「遅いっ!!遅刻よ!!」

いの一番に大声を張り上げたのは、他でもない
彼の良く知るホーンテイルだ。ジャクムは少し
嬉しそうに笑って、周囲を見回す。ここに来て
いるのは彼女だけではない、ビシャスプラントも
来ている。いや、その他にもそれぞれの地域の
守護者たちが一同に解しているのだ。深海の
アクアリウムからはワルメンボウが、オルビスからは
エリジャーが、ビクトリアアイランドからはジュニア
バルログが、武陵からは神仙妖怪が、マガティアからは
キメラが、下町からはおキツネ様が、アリアントからは
デウが・・・全員が揃っている。確かにジャクムは遅刻だ。
「あんな近くに住んでるくせに遅刻するなんて!!
 あんたってば相変わらずだらしないんだから!!」
ホーンテイルはぷりぷりとジャクムに食って掛かる。
「あーはいはい、ごめんなさい。」
ジャクムは相手にしないように通り過ぎる。
全員の前に出て、ゴホンと咳払いをした。
「えー、今日みんなに集まってもらったのは
 他でもない。今日から新しい守護者が
 出来るからだ・・・ソイツが守護するのは
 この前発見されたばかりの新しい国・・・
 ジパング、ショーワ、楓城の3つの町を持つ
 小さな国だ。まぁミンナ仲良くしてくれよなー。」
ジャクムの紹介を受けて、登場したのはでっぷり
太った殿様だった。そばには禿げた頭の老人と
妖怪図鑑から出てきたかのような天狗もいる。
「この殿様が国全体の守護者だ、で、この
 ご老人・・・大親分さんがショーワの町の
 守護者になって、この天狗がジパングの
 守護者になるわけ・・・依存のある者は?」
ジャクムの問いかけに答える者はいない。
「よし、じゃ可決だ。今日は解散。」








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