“どうして、出来ないの?
 好きだと言うだけなのに”






「今日は随分と早く終わったわね」
ホーンテイルとジャクムは雪原の聖地に
来ていた、ここは静かで落ち着く。なにより
神聖な雰囲気がナインスピリットと似ている。
ホーンテイルはこの場所が好きだった。
「そうか?今までもこんな感じだったろ」
ジャクムは大きな雪ダルマを作っていた。
「・・・あんたって本当に子供のままね」
ため息をつきながら、ホーンテイルが言う。
「うっせー、お前には関係ないだろ。」
ジャクムは雪ダルマ製作に夢中だ。
ホーンテイルはジャクムの言葉に、少し
顔を曇らせた。しかしスクッと立ち上がると
背中の大きな翼をブワリと広げ宙に浮いた。

「あたし・・・ビシャスと付き合う
 事になったから、それだけあんたに
 伝えたくて・・・それじゃ、またね。」

飛び去っていくホーンテイルに、ジャクムは
何もいえなかった。ただもくもくと雪ダルマを
作り続ける、手は凍傷しかけているがそれを
気にせずにただひたすらに作り続けている。
「ジャクム、帰るぞ。」
ファイアブルだった、心配そうにジャクムを
見つめている。しかしジャクムは動かない。
「ジャクム、もう諦めろ。」
ファイアブルはジャクムの腕を掴む。
「お前は、自分の気持ちに気づくのが
 遅すぎたんだ。もう諦めろ、他にも
 いい女がいるだろう。ホーンテイルの
 ことは忘れるんだ・・・もう諦めるんだ。」
言い聞かせるように話しかける。
「・・・うっせー・・・」
ジャクムは冷え切った手で雪を掴むと
ファイアブルに向かって投げつけた。
雪はファイアブルの身体に触れると同時に
蒸発し、消えてなくなる。ジャクムは泣いていた。
「帰ろう、ジャクム。」
ファイアブルの言葉に、ジャクムは小さく頷いた。





















気がついたら、いつもアイツがそばに居て、笑ってくれていた。

そんな単純な事に、俺はずっと気がつかずに
いた。そしてそれに気がついたときにはもう
何もかもが遅かった、アレから数百という
長い時間が流れて・・・俺もホーンテイルも
たくさんの仲間を得た、だからだろうか・・・
次第に俺とホーンテイルは二人で遊ばなく
なっていった。俺とホーンテイルは住処が
遠いからなかなか会いに行けなかったし・・・。
そんな時にホーンテイルの話し相手になったのが
ビシャスだった、昔は子供みたいに小さかった
ビシャスも今は立派になって・・・次第にあいつの
心は俺から遠ざかって行った。その事を知って
・・・そして俺はやっと自分の気持ちに気がついた。

いつからだろう、アイツの事を友達として見れなくなったのは。

昔は男みたいな女だな、とそれしか思って
いなかったのに。いつの間にか俺はあいつを
女としてみていたんだ、ホーンテイルは俺の
知らない間にどんどん女らしくなっていって・・・
今じゃ全大陸に知れ渡るほどの美人になってる。
俺は、ずっとエルナスの奥地で炭鉱の活性化を
見届けているけど、あいつはリプレ全体のことを
いつも気にかけている。小さなドラゴンたちに
飛行を教えたり、大きな奴らには武術を教えたり。

あいつは、誰からも愛されている。
あいつを大事に思ってるのは俺だけじゃない。

遅すぎたんだ、俺は。
今更気がついて、それで?






それで、何が出来る・・・?









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