“拗れた糸は、もう元には
 戻らない・・・永遠に、ね”






何人、女を抱いただろう。
どんな美人を相手にしても、どれだけ身体を
重ねても、満たされるはずも無いのに・・・
バカなことをしている、自分でもそう思う。
ホーンテイル以上に好きになれる相手なんて
あるはずないのに、判っているのに・・・
いつまでも、諦めることが出来ない。
自分の女々しさに嫌気がする、それでも・・・
たったひとときでも、一瞬でもいいから
ホーンテイルを忘れたかった。そうじゃないと
何もかもが壊れてしまいそうで・・・俺は
ホーンテイルが好きなのに、思いを伝える
ことさえ出来ずに、俺の恋は終わってしまった。

ちくしょう

外を見ると、満天の星空だった。
気分を入れ替える為に、外の空気を吸い込む。
ゴツゴツした岩に囲まれた住処を離れて
大きく深呼吸する、だんだん心が落ち着いてくる。
けど、そばにホーンテイルは居ない。

ちくしょう

解ってる、アイツはビシャスと付き合ってる。
俺のことは友達としか思ってない、俺の
ことを好きになることは無い、間違っても無い。

だからこそ、苦しい。

「・・・ちくしょぉ・・・」
せっかく落ち着いてきたはずの心が再び
揺らめきだす、憤りや、悲しみや、苦しみや
名前もわからないぐちゃぐちゃとした感情。
どうすればいいかさえ、俺には解らない・・・

「ちくしょぉぉぉぉ!!!俺のドコが
 駄目だって言うんだよぉ!俺だって
 ホーンテイルのことが好きなのにっ
 俺のほうが絶対に好きなのにぃぃ!!」

叫ぶように、喚くように、大声で搾り出した声。
ハッキリ言って恥ずかしいことこの上無い。
俺は何をやってるんだ・・・

「・・・・本当?」

ホーンテイルだった、いつから居たのだろう。
「―――ッ!!・・・聞いてたのか?!」
俺の顔は真赤に染まる、ホーンテイルは
ふわりと俺のそばに降り立つと、俺に近づいて来る。
「本当なの?ジャクム」
真剣な表情で、俺を見つめる。
「わっ・・・忘れろ!!頼むから!!」
俺は慌てて住処の中へ戻ろうとする。
しかし、出来ない。ホーンテイルが俺の腕を
長い尻尾で締め付けていた、一歩も動けない。
「・・・本当なのかどうか、答えて。」
鋭さのある声で、短く言った。

「・・・・本当だよ」

言ってしまった、伝えてしまった。
もう、後戻りは出来ない・・・
「おっお前が!!お前が勝手に美人に
 なるから!!昔は男みたいだった
 のに!いきなり綺麗になったりするから
 ・・・だから・・・俺・・・ごめん・・・」
どうして謝らなければならないのか。
解らない、解らないが謝らなければ
いけない気がした。伝えてしまったから?
言ってはいけないことを、言ってしまったから?

「あたしも」

ホーンテイルの短い言葉に、耳を疑った。
「あたしも、好きよ。」
声が、出ない。鼓動が、激しい。

ホーンテイルが?好き?俺を?
どうして?ビシャスは?嘘?
ホーンテイルが俺を好き?俺の
ことを好き?ビシャスじゃなくて
俺を?俺のことを?俺だけを・・・?

頭の中が、ぐちゃぐちゃになっていく。
「好きよ、ジャクム。」

キス された

ホーンテイルが、俺に、キスした。
「・・・ん・・・」
ゆっくりと離れる唇。
「・・・これで信じてくれた?」
柔らかな微笑みで、ニッコリと笑った。
「・・・ビシャス・・・は?」
うまく口が動かない。
「別れるわ、好きじゃないし。アンタの
 こと忘れる為に付き合ってただけよ。」




ああ、夢だこれは。






次へ